希望退職者応募は是か非か?
近年は、企業が希望退職者を募ると、募集人員以上の社員が退職を希望するようになった。
以前は、希望退職者を募っても、なかなか枠が埋まらなかったというのに、驚くべき変化だ。
これはどうも、企業の寿命と関係があるらしいと、私はにらんでいる。
というのも、会社の寿命は30年とかつて言われたからだ。
これは20年ほど前に日本経済新聞社が、過去の上場企業100社のランキングの推移から読みとった、企業の平均寿命についての考察だ。
現代社会においては、30年たつと経済環境がガラッと変わってしまう。
技術革新により、人々の生活様式はドンドン替わり、また価値観もドンドン変わっていく。
そのおかげでかつては花形産業だった分野が斜陽になり、また全く存在しなかった業種や業態の企業が大きな収益力を持つようになるというわけだ。
だから2~30年前に花形産業に就職した40代50代のサラリーマンは、今やこれからの行く末が先細りであることを悟り、積極的に希望退職に応じるのかも知れない。
世の中はドンドン変わる
考えてみれば、今、大きな力を持つインターネット産業なんて、ここ10年で大きくなった分野である。
Amazon、グーグル、ヤフーなどは、90年代にスタートして全世界に経営を広げている。
ネットオークションやネット通販のようなモノも、クロネコヤマトの宅急便の存在無くしてはあり得ないが、これだってまだ十年ちょっとしか歴史がないものだ。
その一方でテレビの視聴率はドンドン下がり、ビデオテープはディスクに置き換わってしまった。
学校ではパソコンを教え、ワードやエクセル、パワーポイントなども学校で習うようになった。
インターネットの接続料も、月々3千円もかからなくなり、時間を気にして、接続料が安くなる11時を待たなくても良くなった。
30年前に意識を失った人が、今、蘇生したら、さぞやビックリ仰天の世界であるに違いない。
だから30年前にベストだと思った就職先が、今や先細りになっているのも仕方がないことかも知れない。
バブル時に重い住宅ローンを組んでしまってヒイヒイ言っているのであれば、思い切ってここで希望退職に応じて、ローンを精算するのもイイかも知れない。
希望退職の利点
とは言っても、安易に希望退職に応じて、その後の収入の目処が立たない場合、困ってしまう。
だからここは、じっくり考えて応募の是非を見極めるべきだろう。
先ず利点としては、希望退職の対象者となれば、退職金の上乗せや再就職に向けての支援を受けることができるということだ。
もちろんこれは、ケースバイケースである。
企業によっては、たくさんの上乗せがもらえたり、逆に上乗せは少ないが再就職先が安定していたりというケースもある。
今の仕事の他に、やりたいことがすでに見つかっている場合、ローンなどを一気に返済して転職するのは、人生の充実に役立つだろう。
「転職したい」「別の分野に挑戦したい」と考えていた人ならこのチャンスを逃す手はない。
ただしかし、自営で何かを始めたいという人の場合、ちょっと考えた方がイイかも知れない。
サラリーマンと自営業では、考え方が全く異なるから、退職金をパアにした挙げ句に山ほど借金を背負う可能性もある。
ラーメンが死ぬほど好きで、ラーメン屋をやりたいと言って始めても、お客をつかめるかどうかは状況次第だし、運次第。
一方、親の介護が必要だからと考えて、介護士の資格をとって働き始めるのなら、まあ失敗する可能性は低いだろう。
もちろん辞めなかった場合のリスクも、考えておく必要がある。
希望退職に応じずに残ったら、さらに状況が悪化して、「ああ、あのときにやめておけば良かった…」ということになることだって、考えられる。
将来のビジョンが具体的にどこまで見えているか、奥さんや家族といろいろ論議して、決断すべきだろう。